今後の中古車輸出
日本からの中古車の輸出は数十年の歴史があるがここのところは減少傾向になってきている。
日本での本格的な自動車生産は昭和30年代から始まり昭和40年代後半には欧米の自動車メーカーと肩を並べるほどに成長し、中古車の輸出も発展途上国向けに行われるようになった。
自動車や電化製品などの工業製品は限られた先進国でしか生産されていなかったが、円高などの要因もあり、国内で生産しての輸出から現地で生産をする形にして変化していっている。
日本からの主な中古車の仕向地ではロシア、UAE、南米チリ、ニュージーランドなどに長い間多くの台数が輸出されていたが、ロシアでは日本車の生産が始まり南米でも日本車の生産がすでに始まっている。今後はミャンマーなどでも日本の自動車メーカーを誘致して現地生産がされる予定になっている。
多くの国々で現地生産が始まれば日本からの中古車の輸出は新車も含めて減少している傾向になっていくほは当然のことに思える。とはいっても全ての国々に自動車の生産工場が誘致されることはないので日本からの中古車輸出はゼロになるわけではないが、今まで多くの中古車を受け入れていた国々への輸出は減少すると考えられる。
どこの国でも自動車の現地生産が始まれば、自国の産業を守るために自動車に輸入関税をかけてその輸入を制限することになる。そのため自動車を生産している国への中古車は高額の関税により利益を得ることが難しくなる。海外旅行などで日本から輸入された中古車が高額な価格で販売されている状況を目にすることがあるが、これは関税を含めた日本からの経費が全て含めれているためであり、その販売価格を見ただけで日本から中古車を輸出して儲かると考えるものではない。
また高額車両がオートオークションで何台も落札しているのを見ると輸出は儲かるのではないかと推察しがちだが、実際には関税を含めた経費が多くかかり、台あたりの利益は極端に小さいものになっている。
中古車を受け入れる国は減っていっている状況では一つの地域や国に供給者が集中し、競争が激化している状況になり、台あたりの利益が大きく下がることになる。またインターネットの普及によりオートオークションがweb化されそのIDとパスワードが世界中に拡散されたため、利益を上乗せして自動車を売る形から台あたりの輸出手数料を定額でもらう形に変わってきていて、台あたり数千円の手数料で輸出をするケースも珍しくはない状況になっている。
これらの状況はフレートや船積み費用を大きく押し下げる原因にもなっていて、中古車の輸出業者だけではなく船会社や通関業者にとっても厳しい状況となっている。すべての国々で自動車の生産がされるわけではないので、日本からの中古車輸出はゼロになることはないが、全体には衰退していき生き残った中古車輸出業者が細々とその仕事を続けているのが、その業界の近い将来の姿に思える。
中古車輸出の独立を支援するサイトが多く存在するが、この状況のなかでは長くその事業を行っていた中古車輸出業者でさえも撤退せざるを得ない状況であり、全くの素人が参入できる業界ではないように思える。