B/Lを顧客に送ったはずなのに・・・・
自動車の販売に限らず客商売をしていると色々な客がいて、色々な業種で商売まつわる感動する話や信じられないような話を聞くことがあります。海外の取引では国内取引ではあり得ないようなことが起きることがあるようです。
ある日にある自動車販売店にZambiaの顧客から問い合わせがあり、在庫している中古車を購入したいとのことでした。この顧客は継続して取引をしている顧客のため、いつものように価格交渉をして顧客と価格交渉が成立したので、Proforma Invoice を送りT/Tでの入金を待つことになりました。
その後、入金が確認されたので船積みをして、顧客の指定した宛先に船積み書類をDHLで送ったのですが、B/Lが届いていないとのメールが来るようになりました。通常、DHLは3日か遅くとも一週間以内には届くので何かの理由で今回だけ遅れているのではないかと思い、この中古車販売店ではあまり気に留めていなかったようです。
また、Zambia向けの船積みではZambiaは内陸の海の無い国(港の無い)なのでTanzaniaのDar es sallamの港へ船積みします。船がその港に着くのは1か月くらいかかるので、その前までには顧客のもとに船積み書類が確実に届くため、少しくらい書類の到着が遅れても問題はないので、あまり気に留める必要もなかった理由になるようです。
その後、2日、3日おきに書類が届いてないとのメールが届くようになりました。現地顧客からDHLへの追跡調査もできるようにDHLの送り状を原本の発送と同時に顧客へ送っているため、その度に、B/Lはすでに送っていると伝え、DHLの送り状を再度送ったのですが、DHLの送り状を確認せずに届いてないことを伝えてきたようです。
お互いに継続して取引をしていることもあったことで、お互いに安心感があったため、DHLの送り状を確認せずに、何度かメールで不着の件のやり取りを続けていたようです。
書類の到着に関する問い合わせは顧客自身でも出来、DHLから発送者であるshipperへ不着の連絡はなく、また発送日から時間の経過を考えれば、たとえ不着であったとしても現地のどこかに処理が留まっていることは間違いのないことなので、この間はDHLへ追跡調査を依頼してくださいと何度も伝えていたようです。
その後、船が到着する頃になって、ようやくDHLの送り状を確認して、B/Lを送ったDHLの宛先と住所が違うと伝えてきました。
通常、中古車の購入者がconsigneeになり、そのconsignee宛てに船積み書類を送ることは一般的なのですが、中古車輸入業者へ販売する場合にはconsignee宛てではなくその中古車輸入業者へ送ることもよくあることになります。また、Zambiaのような内陸の港の無い国々では利用する港の通関業者へB/Lを送ることもよくあります。
そのため、B/L上のconsigneの宛先とは別の顧客の指定した宛先に船積み書類を送ることは良くあります。
この場合にも同様に自動車販売店では船積み後に顧客の指定した宛先を疑うことなかったのですが、その顧客がメールで伝えてきたことによると、その宛先を指定したことはなく、その宛先も知らないとのことでした。何があったのかよくわからないので、宛先を指定したきたメールを顧客に転送し確認してもらったところ、そのメールをその顧客は送ってないとのことでした。
その自動車販売店でもメールアドレスを確認したところ、その宛先を指定してきたメールアドレスは今まで取引に使っていたメールアドレスとは異なるものでした。
海外の取引では相手方がフリーメールアドレスを使っているケースがほとんどのため、yahoo.comやyahoo.ukなどのメールアドレスが日常的に取引で使われているため、メールアドレスがいつものものと異なっていても気が付かなかったようです。
また、フリーメールを使ったメールのやり取りをネットカフェやホテルなどの公共施設のパソコンを使っているケースが多く、この顧客はこのような施設のどこかでパスワードとIDを盗まれていたようです。
メールの確認してみると船積みを伝えたメールの直後に船積み書類を送る宛先を送ってきていて、自動車販売店からDHLの送り状をメール添付で送った後はメールが来なっていたようです。
この詐欺師はこちらでB/Lの不着のやり取りをしている間、静かに船の到着を待っていたことになります。
その後、お互いにパスワードとIDを盗まれていたことが確認できたので、この顧客はすぐにZambiaからDar es sallamへと飛び、この中古車販売店では船会社へその事情を伝え、現地港での貨物の引き渡しを止める手配がされました。
通常、T/Tの決済では1stと2ndのB/Lを送り、3rd B/Lは何か問題があった場合のために、保存しています。そのため、このケースではB/L原本の1stと2ndを無効とし、3rd B/Lで貨物を引き渡すことになります。
実際の船会社への手続きとしては船会社を通して現地船会社の代理店へB/L原本の1stと2ndでの貨物の引き渡しを止め、3rd B/Lで貨物を引き渡すことを依頼してもらう手配になり、またB/Lの搾取となるため、3rd B/Lでの貨物の引き取りでは、本人の確認のための本人のパスポートのコピーを提出することが必須となったようです。
この顧客の側ではDar es sallamへと飛ぶのと同時に警察へ連絡をしています。お互いがB/L搾取の対応をしている間にすでに船が到着していたのですが、ギリギリのところでこの泥棒への貨物の引き渡しを止めることが出来たようです。その後、何も知らずに貨物を取りに来たこの詐欺師はめでたくお縄となりました。
このケースでは船の到着前にお互いがメールアドレスのパスワードとIDが盗み取られ、B/Lが搾取されようとしていることを気付いたことで、貨物が搾取されることを防ぐことができたようです。
通常はB/LコピーとDHLやEMSの送り状を確認することは必須になり、船積み確認後(B/Lコピーの確認後)に荷受人が現地の港で通関の準備を始めるのですが、この顧客は今までの継続した取引から安心していたようで、船積書類が遅延しているにも関わらず、DHLの送り状を確認せずに、届いていないとメールで伝え続けたことが一番の原因となったようです。
自動車販売店でもメールアドレスが独自ドメインであればそれに気が付く機会はあったのかもしれませんが、フリーメールのアドレスであったため、気が付かなかったようです。
有名ネットショップの偽のネットショップなどで詐欺被害にあう事件が多数報道されていまが、ウェブサイトのアドレスまでを確認してからの方がいいのは間違いのないことですが、なかなかメールアドレスやウェブサイトのアドレスを確認することはないのが実情に思います。